
位置づけ(この記事について)
この記事は、火災現場で動き続ける救援ロボットを考える中で浮かび上がった、モーター構造だけに絞った技術メモです。
結論を出す記事ではありません。 「理屈の上ではできそうだが、現実的にどこを捨てないと成立しないか」を整理するための記録です。
なぜ通常のモーターは1000℃に耐えられないのか
一般的な電動モーターは、見た目以上に“熱に弱い要素”の集合体です。
- 永久磁石(高温で減磁)
- 樹脂やワニスによるコイル絶縁
- 接着剤・樹脂スペーサー
- ベアリングの潤滑油
これらの多くは、200〜300℃程度で限界を迎えます。 1000℃という条件では、構造そのものを作り直す必要があります。
磁石を捨てる:リラクタンスモーターという選択
高温対応を考えたとき、最初に捨てるべきなのが永久磁石です。
候補として浮かぶのが、リラクタンスモーター。 磁石を使わず、鉄心の磁気抵抗(リラクタンス)の差を利用して回転トルクを得る方式です。
利点:
- 磁石が不要
- 理論上、高温耐性を持たせやすい
欠点:
- トルクが小さい
- 制御が難しい
- 効率が低い
ここで最初の割り切りが必要になります。
高効率・高出力は諦める。
コイル絶縁という最大の難所
磁石を捨てても、次に立ちはだかるのがコイルの絶縁です。
一般的なエナメル線は高温で劣化・炭化します。 そこで考えられるのが、
- セラミック絶縁
- 鉱物系絶縁材
- 無機繊維
実際、ガラス繊維やアルミナ繊維は数百〜1000℃級に耐えます。 ただし、
- 硬く、割れやすい
- 巻線加工が困難
- 振動・遠心力に弱い
という問題が付きまといます。
「巻ける」ことと「耐熱」はトレードオフです。
熱膨張差:鉄心とコイルは仲が悪い
高温になると、材料ごとに膨張率が異なります。
- 鉄心
- 導体(金属)
- 絶縁材(セラミック)
これらを密着させると、
- 割れ
- 剥離
- 短絡
が起こりやすくなります。
対策として考えられるのが、
- 鉄心とコイルの間に意図的な隙間を設ける
- コイルを中空・メッシュ構造にする
しかしこれは、磁気効率をさらに下げます。
ここでも割り切りが必要です。
効率を捨てて、壊れにくさを取る。
低回転・低出力という現実解
これまでの割り切りを全て受け入れると、 見えてくる姿があります。
- 高速回転しない
- トルクは最小限
- 精密制御しない
つまり、
「ゆっくり、確実に動くだけのモーター」。
救援ロボット用途では、
- 速さよりも
- 生存時間
- 故障しないこと
が価値になります。
ここで初めて、低性能が意味を持ちます。
それでも残る問題
ここまで割り切っても、問題は残ります。
- 軸受(ベアリング)をどうするか
- 潤滑をどうするか
- 発電・給電方式
モーター単体ではなく、 機械全体の設計問題に発展します。
まとめ(結論を出さない結論)
1000℃環境でモーターを回すことは、 理論上は完全に不可能ではありません。
しかし成立させるには、
- 効率を捨て
- 出力を捨て
- 回転数を捨て
- 制御精度を捨てる
必要があります。
残るのは、 「壊れにくいが役割は限定された回転体」。
それでも意味があるのかどうか。 それは、ロボット全体の仕様次第です。
このメモは、その判断材料として残しておきます。
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