戦後の不発弾はいまも爆発するのか?――アニメと現実のあいだ

建設現場で発見された不発弾

このテーマを書こうと思った直接のきっかけは、アニメ映画『この世界の片隅に』を改めて観たことだった。物語の終盤、不発弾による悲劇が描かれる。戦争の描写としては静かで淡々としているのに、後から重く効いてくる場面だ。

正直に言うと、観終わったあとしばらく「不発弾」という言葉が頭から離れなかった。戦争は終わったはずなのに、なぜこんなにも現在形の恐怖として残っているのか。それが気になり、調べた内容を整理するために、このブログ記事を書くことにした。

本記事では、
・戦後の不発弾はなぜ今も危険なのか
・自衛隊の処理中に起きた2025年の事故が示す意味
・『この世界の片隅に』に描かれた時限爆弾はどこまで現実的なのか
・地震など自然現象で不発弾が爆発することはあるのか
を、事実ベースで掘り下げていく。


不発弾は「古いから安全」ではない

不発弾の多くは、TNTなどの高性能爆薬を内部に保持したまま地中に残っている。爆薬自体は化学的に安定しており、数十年経ってもエネルギーを失わない。一方で、問題なのは信管(起爆装置)だ。

信管は金属部品や雷管で構成されており、長年の腐食によって
・安全機構が壊れる
・わずかな振動や摩擦で反応する
という「設計者の想定外の状態」になる。

つまり、不発弾は眠っている爆弾ではなく、壊れた安全装置を抱えた爆発物だ。


自衛隊の処理中でも爆発は起きている

2025年6月9日、日本で初めてとされる深刻な事故が報じられた。陸上自衛隊の不発弾処理隊が不発弾一時保管庫で、民間業者への委託処分に出す前にサビや泥を落とす作業を行っていた際、信管が作動し破裂したのだ。

この事故で隊員はやけどなどの負傷を負ったが、幸いにも主爆薬は爆発しなかった。ここで誤解されやすい点がある。

「信管が作動した=爆弾が爆発した」ではない。

爆弾は
・信管(起爆スイッチ)
・主爆薬(本体)
という二段構造になっている。今回反応したのは信管内部の雷管や少量の爆薬であり、主爆薬への起爆連鎖は起きなかったと考えられる。

しかし、これは決して安全を意味しない。むしろ逆だ。

・信管が生きていた
・外部刺激で反応した
・主爆薬に伝わらなかったのは偶然

この3点がそろっている時点で、極めて危険な状態だったと言える。もし主爆薬まで起爆していたら、

・半径数十〜数百メートルが被害
・処理員が軽傷で済むことはまずない
・現場はクレーター状態

特に注目すべきなのは、作動のきっかけが「解体」や「衝撃」ではなく、清掃作業に伴う振動や摩擦だったことだ。これは、長年の腐食によって信管内部の構造が崩れ、設計者の意図から完全に外れた挙動を示していた可能性を強く示唆している。

この事故は、不発弾がいかに予測不能な存在であるかを、専門家自身が身をもって示す結果となった。


『この世界の片隅に』の時限爆弾は現実的か

『この世界の片隅に』の中でも、とりわけ衝撃的なのが、不発弾の爆発によって幼い命が失われる場面だ。主人公すずと一緒に行動していた5歳の晴美は、不発弾と思われていた爆弾が突然爆発し、その爆風によって命を落とす。

この描写は観る側に強い感情的ダメージを与えるが、重要なのは、これが単なる誇張ではないという点だ。

戦時中の航空爆弾には、実際に時限信管(遅延信管)が存在した。これは、
・着弾後すぐには爆発しない
・一定時間が経過してから起爆する
という設計思想を持つ兵器だ。

目的は明確で、
・救護活動
・消火作業
・インフラ復旧
に人が集まったタイミングで爆発させ、被害を拡大することにあった。

つまり、作中で描かれた「不発だと思って近づいたら爆発した」という展開は、史実として十分に起こり得た。特に投下から日が浅い状況では、信管はまだ設計通りに動作しており、まさに時限爆弾そのものだったと言える。

一方で、現代に見つかる不発弾は事情が異なる。信管は正常動作しているのではなく、長年の腐食によって
・安全機構が壊れ
・雷管が過敏になり
・予測不能な反応を示す

という、別種の危険物に変化している。

戦時中の不発弾は「動作する時限装置」、現代の不発弾は「壊れた起爆装置」。どちらも危険だが、性質はまったく違う。


地震や地殻変動で不発弾は爆発するのか

「まだ見つかっていない不発弾が、地震の揺れで爆発するのでは?」という疑問は自然だ。

結論から言うと、

地震などの地殻変動が直接の原因となって、不発弾が自然に爆発したと科学的に確認された事例はない。

ただし、地震による
・地盤の変形
・液状化
・地下水の移動

が、不発弾の状態を変化させ、結果的に事故につながった可能性が指摘されたケースは存在する。

つまり、
・「地震が直接起爆した」証拠はない
・「地震が間接的に条件を変えた可能性」は否定できない

というのが、現時点での冷静な整理だ。


まとめ:不発弾は過去ではなく現在の問題

不発弾は、
・古い
・錆びている
・地中に眠っている

それでも、
・爆薬は元気
・信管は壊れている

という最悪の組み合わせを抱えている。

だからこそ、発見時には必ず通報し、専門家以外は決して触れてはいけない。

戦争は終わっても、物理と化学は休戦していない。不発弾は、過去の遺物ではなく、いまも作用し続ける危険物なのだ。

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